REAL-TIME STORY

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⑨:『作戦』
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「ジャック。研究所の周囲に、いくつかのポータルがある。それを使って青いフィールドを作り、研究所を覆う」

ブラントはスマートフォンを操作し、Intelマップを表示した。研究所の位置と、複数のポータルが表示されている。

「フラッシュフォワードが使えれば、勝算はある」
「ああ、だが敵を全て倒す必要はない。警備を破って研究所に侵入できたら、これを使って欲しい」

ブラントはそう言って、懐からUSBメモリを取り出した。怪訝な顔をする俺に、彼が続ける。

「このメモリには、私が開発したウィルスが入っている。所内にあるいずれかのPCに差せば、ウィルスが起動する。ウィルスは自動的に、研究所内のサーバに侵入。例の新兵器の開発データを、国連とロシア当局に送信した後で、サーバを破壊する。彼らの研究成果は消失する。研究を続行しようとしても、その前に警察の捜査が入るだろう」
「なるほど、そうすれば連中の新兵器開発は阻止できる……」

いくつかのポータルを巡りながら、次々と青に変えていく。運転は俺、デプロイはブラントが担当する。その手順は一般のエージェントたちと何ら変わらない。
俺たちはレジスタンスのフィールドを形成し、研究所を青いコントロールフィールドで包んだ。
準備完了。ここからが本番だ。研究所に向けて、アクセルを踏み込む。

白い霧の向こうに、目的の建物が見えてきた。物々しいフェンスに囲まれた、小さな研究所。周囲にサブマシンガンで武装した、傭兵たちの姿が見える。
数は4人、まだこちらには気づいていない。霧が出ていたのが有利に働いた。

「状況を開始。ブラント、あなたはここで待機を」
「ジャック、頼む」

ブラントの言葉を背に、俺は車を降りた。
ARゴーグルを掛け、視界をXMスキャンモードに切り替える。青いフィールドが研究所を包み込んでいるのが見える。
ブラントの待つ車とは反対側に移動し、傭兵達の注意を引きつけるため、ゲートへ向けて走り出す。気づいた傭兵の放つマシンガンの光が、霧の中で明滅した。
刹那、能力が発動した。一瞬先の未来が脳裏に浮かぶ。マシンガンの十字砲火を受け、倒れ伏す俺の姿──。
だがその未来は実現しない。俺は素早く身を伏せ、殺到する弾雨を交わした。

「!?」

傭兵たちがパニックに陥る。
「フラッシュフォワード』は防御だけではなく、攻撃にも役立つ。敵が身を隠そうとする先に、次々と銃弾を叩き込んでいく。俺はわずか4発の射撃で、4人の傭兵を全員片付けた。

「突破する」

俺はブラントに通信し、研究所に向けて駆け出した。
フェンスを乗り越え、敷地内に降り立つ同時に研究所の中から、敵が現れた。
数は20人以上で、身を隠すところも無い。だが、『負ける未来』は見えなかった。レジスタンスのコントロールフィールドが、俺の力を強化する。
俺は戦意を漲らせ、敵の群れ目掛けて駆け出した。