REAL-TIME STORY

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①:『闘争』
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いつだって俺は、闘いの中に身を置いてきた。
望むと望まざるとに関わらず、戦場はいつもすぐ近くにあった。

戦場も、日常も、そう変わりはしない。世界は争いと暴力に満ちている。例えば俺が今立っている、この地においても。
南アフリカ・ケープタウン、深夜2時の暗い路地裏。俺の前には拳銃を持った男が、5人並んでいる。
強盗ではない。立ち姿からは練度を感じる。訓練された兵士の臭いだ。

「ただの強盗じゃなさそうだな。エンライテンドか? それともヒューロンの?」

男たちは答えない。だが、意図的に発した単語に無反応である事から、奴らが「こちらの世界」の人間である事が判る。
耳元で、俺の上司の声が聞こえる。

《ジャック、無事か?》

俺がかけているARゴーグル。通信機能とXMスキャン機能を備えた、最新鋭のガジェット。そのマイクに答える。

「フィールドの準備は?」

《万端だ。いつでもフィールドを形成できる》

「了解。状況開始」

そう答えた瞬間、ゴーグル越しの視界が、青い光に染まった。
周辺のポータルがリンクされ、レジスタンスのコントロールフィールドを形成する。全身に力がみなぎるのを感じる。俺は、眼前の敵めがけて駆け出した。

「!?」

男たちが銃を構える。瞬間、俺の脳裏に、ある光景が明滅した。
連中が銃を撃ち、俺が射殺される光景――弾丸の軌道、着弾箇所、敵の動き、その全てがありありと浮かぶ。
だがそれは、『まだ起きていない出来事』だ。俺は垣間見た未来を変えるべく、弾丸の軌道から身を逸らす。一瞬後、先程まで俺がいた場所を、無数の銃弾が切り裂く……。

男たちが驚愕の叫び声を上げる。その隙きをつき、俺は敵の顎に強烈なフックを叩き込む。
再び脳裏に未来の光景が明滅する。隣の敵が俺を至近距離から撃ち殺す光景。だがそれも「まだ起きていない出来事」だ。弾丸を避けながら拳を繰り出す。5人いた敵は、最後のひとりとなった。

「な……なんなんだ、お前は……!?」

敵が、戦慄の声を上げる。その問いに答える代わりに、俺は最後の拳を叩き込んだ。
その炸裂音が響いた後、路地裏に動く者は、俺以外いなくなっていた。

「終わりました」

《流石だ、ジャック。今そちらに合流する》

世界は争いに満ちている。だが俺には生き抜く為の『武器』があった。
一瞬先の未来を予見する力、『フラッシュフォワード』――青のフィールド内でのみ使える能力。
それがセンシティブとして生まれ、レジスタンスのエージェントとして生きる俺の、『武器』だった。