REAL-TIME STORY

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⑫:『そして彼女は戦場に』
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――もはや、逃げ場はないと思った。
どこにも逃げられないのなら、立ち向かうしかないと思った。
だから私は覚悟を決め、監視者の目を盗み、そっと自宅を抜け出した。

私は今、深夜の街を歩いている。
行先はヒューロンの研究所。慣れ親しんだ私の職場。私に生きる希望と、償い切れない罪をくれたあの場所へ。
胸の内には決意が渦巻いている。恐怖を凌駕する

(私が真実を暴く……! ヒューロンが行った、全ての罪を……!)

恐らく消えた被験体たちの事は、氷山の一角に過ぎないだろう。
メールには『事業計画は予定通り』と書かれていた。きっと他にもヒューロンは、多くの罪を重ねている。
ならばそれを暴くのが、私の使命。被験体たちを救えなかった、私の贖罪だ。

何も知らなければ、平穏な日々を続けられたのかもしれない。
だけど私は気づいてしまった。世界は私の見たままのものではなかった事を。
私が辿ってきた道は、過ちに満ちていた。共に研究に打ち込んだ同僚たちは、邪悪に染まっていた。
それを正す事が出来るとしたら、今をおいて他にない。

もう、引き返す事は出来ない。
希望に満ちた日々を捨て、私は闇の中に身を投じようとしている。仲間も無しに、たった独りで。

(……それがどうしたの? 私は最初から独りだったでしょう?)

私の頬に、寂しい笑みが浮かぶ。その笑みを引き締め、前を見据えた。
行く手にヒューロンの研究所が見える。白い光に覆われた建物。多次元世界から溢れ出す、XMに包まれた建物。
私は勇気を振り絞り、歩みを進めた。私と世界の運命を変える、そのポータルに向かって――。


【Continued to 『Ingress the Animation』...】