札幌行きの飛行機に乗り込んだ僕と古田警部は、エコノミークラスの一番後ろに座った。
警部は顔を近づけ、小声で説明を始める。
「さて誠、今回の事件についてだが――電話でも触れたが、なかなか興味深いヤマだ。この2週間で4人の人間が、既に殺されている」
「4人……!? それって、連続殺人ってヤツじゃ……」
「ああ、しかも普通の連続殺人事件じゃない。4人のガイシャは、全員奇妙な殺され方をしているんだよ」
流れるように説明する古田警部は、いつものダラけたおっさんではなく、刑事の眼になっていた。
僕はその内容に、ごくりと唾を呑む。
「犯人は……?」
「今のところは、一切手掛かりなしだ。手口すらもわかってない。ガイシャたちの関係も見つからんし、現場も札幌近郊でバラバラ。犯人の痕跡も全く残ってなくてな」
「な、なるほど……それで僕の出番って訳ですか」
警部は神妙に頷いた。
「札幌についたらお前には、各事件の現場に行き、そこの記憶を読んでもらう。恐らく人が死ぬ光景ばかり見えるだろうし、精神的にも負担が大きいだろう。苦労を掛ける事になるが……やってもらえるか?」
警部のその言葉には、こころなしか気遣いが滲んでいるように思えた。
確かに気は進まない。だがここまで来て断る事も、さすがに出来ないだろう。
「やってみましょう。……その、まぁ、出来る範囲で」
「出来る範囲って――そこは普通『僕に任せて下さい!』とかじゃないのか?」
「すみません、こういう性格なんで……」
警部が呆れたように苦笑する。
窓外を見下ろす。そう言えば前に飛行機に乗ったのは、いや、東京を出たのはいつだったろう。