REAL-TIME STORY

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⑩:『翠川誠の疾走』
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『五人目の犠牲者が出た』。
その連絡を受けた僕と古田警部は、ラーメン屋を飛び出した。走る警部の後を追いながら、僕は声を上げる。

「警部、現場はどこなんですか!?」
「ここからすぐ近くの、円山公園だ! 発見者は地元市民、道警に通報が入ったらしい!」

現場は北海道神宮のすぐ傍にある、自然豊かな公園だった。木々の間に設けられた遊歩道を駆け抜けると、大きな墓石のようなものが見えてくる。
そのすぐ傍に、うつぶせに倒れている中年女性の姿が見えた。五人目の犠牲者だ……。
付近には通報者らしき若い女性が、震えながら立っている。警部がそこに駆け寄って尋ねた。

「警察です、通報者はあなたですか?」
「は、はい……! ランニングしてたら、この人が倒れているのが見えて……」
「発見したのはいつぐらい? 他に誰かいましたか?」
「5分ほど前です……私以外、誰も……」

警部は、少女に素早く一礼して僕を見た。

「誠、まだ近くにいるかもしれない。周囲に人がいないか探せ!」
「け、警部は!?」
「俺は心肺蘇生を試みる!」

警部はそう言うと、倒れた女性に駆け寄り、心臓マッサージを始めた。
他の犠牲者たちと同じく、心臓麻痺を起こしているなら、心肺蘇生法は有効だろう。だが女性に反応はない。僕は初めて遭遇する修羅場に恐怖しつつ、犯人がいないか辺りを見回す。

それらしき人影は見えなかった。だがその時、僕の視界があるものを捉えた。
おばさんのすぐ傍に建てられた、墓石のようなモニュメント。それを見た時、僕は思わず通報者の少女に尋ねていた。

「ちょ、ちょっといいですか……? この墓石みたいなのって?」
「えっ……? えぇと確か、『島判官紀功碑』っていうものみたいです。北海道開拓の父を称えた石碑とかで……」
「いつぐらいに建てられたのかな?」
「確か100年くらい前とか……」

ごくりと唾を呑んだ。
第五の犯行現場も、『長い歴史を持つモニュメント』のある場所だった。やはり同一犯の仕業だろう。
石碑に歩み寄る。警部が心臓マッサージをしながら叫んだ。

「どうした、誠!」
「犯人の逃走経路を探ります。この石碑なら、きっと読める……!」

今までの犯行現場は、大きな建物ばかりだった。そういうものは僕の能力では、記憶が読みづらい。
だけどこのくらいの大きさなら、能力の精度はぐっと高まる。犯人を捕える絶好の機会だった。

(最後のチャンスだ……! 行くぞ!)

僕は手袋を外し、石碑に触れた。

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――いつもよりノイズが少ない光景。太陽の高さから見るに、今からほんの少し前の出来事だ。
沈みかけの夕陽に照らされ、犠牲者の女性と、犯人らしき男の姿が見える。
犯人はいつものように、女性に手を触れた。その場に崩れ落ちる女性
それを見下ろしてにやりと笑い、歩き去っていった男の顔は――

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「――っ!!」

そこまで記憶を読んだところで、僕は我に返った。そこに警部が声をかけてくる。

「誠、何か見えたのか!?」
「ええ……! 犯人の顔がわかりました」

その言葉に警部が目を見開く。僕は犯人が去った方向を見て続ける。

「恐らくまだ近くにいるはず……追いかけます!」

警部の答えを待たず、僕は駆け出した。