REAL-TIME STORY

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⑩:『再会』
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「侵入者だ!」「総員展開、包囲して仕留めろ!」

研究所から出てきた傭兵たちが、口々に叫ぶ。
言語はロシア語ではなく英語。やはり雇われの警備兵だろう。動きから見て練度も低くない。
だが、俺の敵ではない。俺の眼には彼らの動きが、先読みできる。俺は走りながら拳銃を構え、その一人を撃った。

1人目が倒れると同時に、その何倍もの銃弾が返ってくる。『フラッシュフォワード』で未来を予測、弾丸の来ない位置に身をかわす。無数の弾丸が俺の体をかすめ、背後に吹き抜けた。
敵の表情が驚愕に染まる。俺は倒れた敵に駆け寄り、その手からマシンガンをむしり取る。

今度は敵が手榴弾を投げつけ、俺が吹き飛ばされる光景が見えた。
俺は冷静にサブマシンガンを構え、手榴弾を投げようとしている敵を撃つ。銃弾は彼が握っていた手榴弾を捉え、爆発音が響き渡った。

爆風が周囲の敵を襲い、俺はその間に別の敵を撃つ。反撃を避けながら撃ち続ける。
銃声が響くごとに敵が倒れ、見る間に減っていく。20人以上いた敵は、瞬く間に3人まで減っていた。

「ひ、ひ……!」

残った敵がうめき声を上げる。その表情は驚愕から、恐怖に変わっていた。
俺は頭の片隅で思う。『お前らじゃ勝てない、逃げちまえ。命を懸けるような仕事じゃない』と。
だがそれが叶わない事も、かつて傭兵だった俺には判っていた。残る3人は逃げる事なく、俺に銃を向ける。
放たれた弾丸を俺は回避し、引き金を3回引いた。その銃撃は的確に、彼らの頭を捉えていた。

「……掃討完了」

呟き、銃を下ろす。いつもは感じない虚無感が、わずかに胸を満たしていた。
今回の敵が、傭兵だったからかもしれない。戦場を棲家とする、俺と同じ種類の者たち。雇い主の意向次第で、その命は駒のように扱われる。

だが感傷に浸っている暇はない。これで敵が全滅したとは限らない。新手が出てくる前に研究所に入り、仕事を終えなくては。
俺はそう思い、研究所に向けて走った。入口を蹴破り、施設内に入る。

建物の中は薄暗く、無機質な廊下が奥へと続いていた。研究者らしき者の姿は辺りに見えない。恐らく銃撃戦の音に怖気づき、皆どこかに隠れたのだろう。
廊下の両脇には、研究室の扉が並んでいる。一番奥の扉を警戒しつつ開けると、だだっぴろい部屋が広がっており、中央に、金属製の巨大なドーナツのような機械が鎮座していた。

(これが、XM兵器か……!)

直径2mはあるその機械は、ところどころ中の配線が剥き出しになっていた。周囲には作業用マニピュレーターがいくつもあり、試作中だという事が見て取れる。
室内に人の気配はなく、壁際に机とPCが並んでいた。俺はその中の一つに目を付け、ブラントから渡されたUSBメモリを差す。すると自動的にウィルスが起動し、処理を開始した。

(……あとはウィルスが、例のXM兵器の開発データを破壊してくれるはずだ)

長居する必要はない。そう思い、研究室を後にしようとした時――
突如、奇妙な未来が脳裏をよぎった。

「ッ!?」

それは数多の未来を予見してきた俺にも、初めて見る光景だった。
XM兵器が赤い光を放ち、それを浴びた俺が倒れる未来が。

(起動したのか!?)

だがそれを先読みした所で、回避する手段はなかった。銃弾は避けられても、光を避ける事は出来ない。一瞬後に閃光が瞬き、俺はそれをまともに浴びた。

「ぐッ!」

脳を直接殴られたような衝撃が俺を襲った。意識が遠のき、思わず膝をつく。
その時、部屋の扉が開き、ダークスーツを着た男が姿を現した。アフリカで俺を襲った男たちの一人だ。

「久しぶりだな。貴様が来るのを待っていた」

男が銃を俺に向ける。俺は痺れる体に力を込め、銃を握り締めた。